「すい臓がん」と言われたら。その体験からの皆さんにお伝えしたいこと
「すい臓がん」と聞いてあなたはなにを思いますか?
そして、「すい臓がん」の言葉をどのように受け取りましたか?
このブログでは私が実体験、そして今尚続く闘病の中で「今感じていること」を書いています。
また、主に50代で仕事と家庭をお持ちの方をイメージしています。
いろいろなご意見や立場があると思います。どのような内容、形であれコメント欄に記入してもらえれば幸いです。
コメントは私自身、そして読者、コメントを書いた方へのフィードバックになると思っています。
患者本人、ご家族のこれから、そしてこれまでの気持ちの整理になれば幸いです。
「すい臓がん」といわれたら
「すい臓がん」と言われ以下の3つのキーワードを思い出してください。
- 生存率と余命
- リビングニーズ特約
- 仕事をやめない
すい臓がんと生存率
すい臓がんはがんの中でも最悪と言われています。その理由は生存率の低さからです。
具体的には先日、国立がん研究センターが全国のがん拠点病院などでがんと診断された人の10年後の生存率を発表したことを受けてNHKが3月16日付けて以下のような発表を行いました。
▽ステージ1:28.6%
▽ステージ2:10.3%
▽ステージ3:2.8%
▽ステージ4:0.8%
▽全体:5.4%
すい臓がんの部分を抜粋引用www3.nhk.or.jp
生存率とは
生存率には、「実測生存率」、「疾病特異的生存率」、「相対生存率」、「ネット・サバイバル(Net Survival,純生存率)」があります。
上記の数値は、ネット・サバイバルを用いた値のようです。
生存率の種類 | 計算方法 | 備考 |
---|---|---|
実測生存率 | 死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率 | 治療成績や医療質評価等では用いられない |
疾病特異的生存率 | がん以外の原因で亡くなった患者さんを除外して計算した生存率 | 国際比較や長期間追跡調査では用いられない |
相対生存率 | 患者集団の実測生存率を、患者集団と同じ性・年齢構成の一般集団における期待生存率で割ることによって算出する生存率 | がん対策の評価や国際比較等に用いられるが、治療成績や医療質評価等では用いられない |
ネット・サバイバル(純生存率) | 相対生存率と同じく、がん以外の死因から影響を受けないようにするための指標だが、期待生存率ではなく統計モデルを用いて算出する生存率 | 最新かつ最良とされる指標だが、計算方法やデータ品質等に問題点もある |
余命とは
余命は「生存期間中央値」と呼ばれるものです。つまり半分の方がまだ「生存中」という事です。
また、生命保険の特約「リビングニーズ」はこの余命で判断されます。生命保険があれば確認してください。リビングニーズ支払いの条件は多くは余命半年でしょう。
リビングニーズとは
リビングニーズは「余命」が条件です。
メリット/デメリットはありますが、わたしの意見は「すい臓がん」と言われたらまずリビングニーズ特約を活用した方がよい思います。
多くの場合は、手数料と6か月分の金利などが引かれ、死亡時給付されるよりは少ない金額になります。しかし、その後の支払いが免除される場合がありますので、その後の余生によってはお得な場合もあります。
そして、何と言っても、現金があることは心強いです。
自分に関係ないと思わず、メリットがあると思ったら主治医に「余命」半年の診断をお願いしてください。
すくなくともステージ4では余命半年の診断をもらえると思います。また、ステージ3であっても診断をお願いしてみてください。だめでも、診察から3か月から6か月過ぎ頃には「余命」半年の診断はもらえると思います。そういう病気です。
参考として、余命診断書は公的な医療機関(国・公立病院、国・公立大学附属病院など)では、料金の目安は3,000円から5,000円となっています。
リビングニーズ特約とは、余命6か月以内と判断された場合に、本来は亡くなったときに支払われる死亡保険金の一部または全部を生前に受け取ることができる特約です。
仕事を辞めない
あぁ・・余命1年・・余生は自分のために、自分はこれまで頑張ったんだから、これまで家族に尽くしたんだから・・
という感じになっていないでしょうか?
「仕事を辞めるのはいつでもできる」
まず、こう考えて「仕事を辞める」決断の優先度を下げてください。
なぜ仕事辞めようと思うのか?
なぜ、仕事をやめようと思うかといえば仕事を辞めると自由になれるという思い込みからです。
その思い込みは、社会風習やドラマ、つらつらみる「こうして癌を克服」を読むと「自由」「解放」=「幸せ」「ストレスフリー」という構図でになっていて、原因が「仕事」を想起するような内容からではないですか?
わたしの感想では、これらの情報は、「自由な時間を最大限に活用、楽しむ」ということで、仕事を辞めて自由時間を作る意味ではないと思っています。
ほかには、特に転職情報誌提供だったり、アフィリエイトの仕事、バイト紹介記事の場合は、「すい臓がん」が理由ではなく、転職を進めている目的だという目で記事を見直してください。
仕事の辞め時はいつか?
主治医(セカンドオピニオン)から自分の治療計画とその時期の容態をご家族と一緒に聞いてください。
例えば、
- 抗がん剤の副作用
- 手術した後どうなるか
- どんな場合に入院が必要か、その期間はどのくらいか
- どの辺まで動けるか(生存率、余命などを参考に)
- 治療にどのくらいの金額がかかるのか
- ほんとうに必要な検査なのか
- なんのための検査なのか
など、納得できるまで聞いてください。そして、
ご自分の仕事環境を鑑み、生きている自分がどこまでやれるかを想像してください。
そして、上記の話をもとに職場と話し合ってください。
もしかすると会社の規定の勉強も必要かもしれません。
意外に従業員に有利なこと書いてあります。ご自分でこれこれを適用したいと申し出てください。
また同僚の協力がいる場合があります。昨今の個人情報の観点から病名まで説明しなくともよい場合があります。その職場のルールを使って、同僚から理解が得られるように根気強く周囲への協力を申し出てみてください。
但し、単に「すい臓がん」という説明ではなく、どのようなサポートをしてもらいたいかを具体的に説明してください。
「どうなるかわからないけど、なんとかして!」「かわいそうながん患者に愛の手を!」などという態度にならないように注意してください。
例えば、
- 抗がん剤の治療の時間帯だけ会社を一時抜けたい(休暇ではない)
- 副作用の強い期間は時短勤務にしたい(休暇ではない)
- 手術期間中は一時的に休職にしたい。
などです。
その上で、このような相談をやってみて不愉快だったり、不都合があった時、
休職、転職、引退
などを考えてください。
どんな条件になったら辞めるとか、ここまで頑張るなどの目標を決めるのもいいかもしれません。
しかしその会社にいるメリットは忘れてはいけません。
仕事の金銭的メリット
現職を続けたほうがよいかは、職場環境だけではなく保険や福利厚生の内容も大切です。
保険の種類は以下の表になります。
保険の種類 | 運営する保険団体 (保険者) |
問い合わせ窓口 | 主な加入者 | |
---|---|---|---|---|
被用者保険 (職域を土台とした 保険) |
健康保険 | 組合管掌健康保険 (組合健保) |
各健康保険組合 | 会社員とその扶養家族 |
全国健康保険協会管掌健康保険 協会けんぽ(前・政府管掌健康保険) |
協会けんぽ各都道府県支部 | |||
船員保険 | 全国健康保険協会 船員保険部 |
全国健康保険協会 船員保険部 |
船員とその扶養家族 | |
共済保険 | 各共済組合 | 各共済組合 | 公務員とその扶養家族 | |
地域保険 | 国民健康保険 | 各都道府県 各市区町村 |
各市区町村の窓口 | 75歳未満で被用者保険に 加入していない方 |
高齢者医療制度 | 後期高齢者医療制度 | 後期高齢者医療広域連合 | 各市区町村の窓口 | 75歳以上の方 65歳以上75歳未満で 一定の障害がある方(要認定) |
沢山ありますが、特に赤字で書いてあるのは働いていることが前提の保険です。
ご自分の勤務先んぼ保険がどれに属してどんなメリットがあるか確認して下さい。
例えば、
- 高額医療制度に加え「付加給付制度」の有無
- 「延長傷病手当金付加金」の有無
などを調べてください。
傷病手当金をもらえる期間は休職が決定してから開始されます。
ですから時短や有休を活用し可能な限り休職は先延ばししたほうが有利です。
仕事を辞めるとき
しかしながらすい臓がんの生存率は決して高くなく、当然、余生は短い期間になります。
すい臓がんの治療の後半、末期には急性増悪期にはいると急激にQOL(生活の質)が低下するとされています。
急性増悪期に入る前兆としては、食事摂取量の減少や嘔吐・下痢・便秘などの消化器系障害、呼吸困難やせき・喀血などの呼吸器系障害が出ると言われています。
いずれにしろ、幸か不幸か末期はさほど長い時間ではないようです。
一方で、低い確率とは言え10年を超える場合もあるのです。
ですので、主治医から見放されるまでは、生きていく自分をイメージしてください。
生きるためには結局、仕事が必要です。
仕事をするメリットと、自分の治療経過と容態をみながら、やめたくなったら辞め時を考えましょう。
「すい臓がん」と言われても仕事を辞めることはないのです。
治療を始めてから体調と向き合いながら、やめたくなったら辞めればいいのです。
最後に
「すい臓がん」と言われたら、一番に知ってほしい、考えてほしいことを書きました。
一番伝えたいポイントは「生きていくこと」です。
意外かもしれませんが治療方法や医療施設のことはさらに後回しです。
なぜなら「お金」がかかるのです。綺麗ごとだけではすみません。
ご家族は患者以上に大変です。本人の心、身体のケア、お金の心配、親族への配慮、がん患者の死後、など沢山の課題があり、負担がかかるのです。
「かわいそうながん患者」
ではいられません。
これからどうすれば家族として生活できるか、本人としてどう生きるのかを「一緒に」考えてください。
決して患者本人、介護をする家族各々の問題ではないのです。もちろん各々解決すべきことはたくさんあります。しかし、患者と家族として生きるためには「一緒に」考えていく必要があります。一人で考えてはいけません。